か わ い い ひ と | back | next | index |
「…何で、友達だって言ったの」 「…?何がですかィ」 「君のお姉さんと会った時の話」 …ああ、あれか。 沖田が漸く意味を理解するや否や、銀時の表情は益々不機嫌になった。 先刻沖田の姉と言う人物に甘味処で出会ってからというもの、銀時の機嫌はまるで今にも雷が落ちそうな程立ち込めた暗雲の如く、ピリピリと緊張したものだった。 銀時構成成分の80%以上をも占める甘味を前にしたのに、この機嫌の悪さはアレの所為だったのか。 早歩きで通りを抜けようとする銀時を横に、沖田は一人で納得していた。 「ちょっと沖田くん、『あれか』はないんじゃない?『あれか』は。俺すんごーく傷ついたんですからね!俺とお前との関係はそんなんじゃねーだろ」 「『恋人』ですものねィ」 「…っ!」 己の思っていた答えをズバリ的中させられ、銀時は一瞬、どきりと心臓を跳ねさせた。 二人の仲を分かっていて、自分の実の姉に銀時を『友達』として紹介した沖田に、銀時はツキリ、と胸に鈍い痛みを感じる。 「な、にそれ。じゃあお前、俺の事単にからかってたってーのか?お前の気持ち信じた俺は、阿呆!?」 「ちょ、旦那!落ち着いて下せえ!」 叫び暴れ始める、自身よりも大きな男。 告白したのも愛を囁くのもいつも自分ばっかりで、てっきり彼は自分の事なんて遊びとしか考えていなかったのかと思っていたのに。 銀時の、その反応がとても嬉しくて、沖田は刹那、通りの真ん中という事も忘れ、銀時に抱きついていた。 「…だって旦那、俺がいっくら好きだって言っても、何の反応も見せなかったじゃねえですかィ。だから俺、不安になったんですよ」 「沖田くん…ごめ 「でもいいんです。こんな可愛らしい銀時さんが見れたんですしね、姉さんに感謝しなきゃだな」 「…!」 「愛してますよ、銀時さん。いずれ姉さんにもちゃんと紹介します、俺の『恋人』だって」 にこりと幸せそうに微笑む沖田に、銀時はまた、心が満たされていくのを感じた。 …どうしても、敵わないんだよな、コイツには。 相手の言葉一つでこれほど心が動かされようとは、思っていなかった銀時。 でもそれは嫌ではないと、この時、銀時は初めて知ったのだった。 (こんなに好きになっていたなんて、) (お互いの事が大好きな沖銀) |
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