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お恥ずかしながら、ワタクシ坂田銀時、記憶喪失になってました。
「なー、多串君よ」 「あ?」 「記憶喪失中の俺って、どうだった?」 当然、記憶喪失中の自分が気になる訳で。 思いきって多串君に尋ねてみた。 「どう、つってもな…(俺ァ、テメーに忘れられて相当ショックだった、なんて口が裂けても言えねえよ)」 興味なさげに、多串は懐から煙草を一本取り出すと素早く火をつけやがった。 …なに、記憶なかった時の俺って、そんなに存在感なかったわけ!? なァ!? 「な、なんか感想っつーか、ホラ、なんかあんだろ、なんか!(必死)」 「別に」 「!(ガーン)」 今『グサッ』と来たよ、銀サンの心に言葉の刃がグッサリ刺さっちゃったよ! ブロークン・ハートだよ!! アレ、ハート・ブロークン? …ま、そんなのはどっちでもいいんだよ。 とにかく、銀サンの心はでっけえ矢(アレ…剣?)が刺さっちゃって、ズタズタのボロボロな訳でして。 「…」 「オイ」 「……」 「…何拗ねてんだ、………銀時」 そう言ってコイツは俺の癖っ毛を丁寧に、何度も優しく撫ぜた。 大きな男らしいゴツイ手で撫でられる。 でも嫌じゃない。 むしろこの感じは好きだ。 俺の名を呼び心に木霊する低いテノールも、何もかも総て。 …あー、俺、相当重症かも。 「……ったく、記憶がねえテメーなんて、テメーじゃねェだろうが」 「なんでよ」 「俺の事を知ってて、俺に惚れて、こうして目の前にいるのがテメーなんだよ。 俺を忘れてるテメーなんて、テメーじゃねえ。違うか」 …ごもっともです、ハイ。 なんで同じ男なのに、こうも格好良い言葉をさらっと吐いちまうかねえ、コイツは。 「もう………俺の事忘れんじゃねェぞ」 ぼそっと小さく呟いたみてえだけどな、ゴメン、俺には丸聞えだわ。 …ついでに、も一つ。 もう俺、アンタから離れられそうにねえ。 重症通り越して、末期だよ、俺ァ。 (らぶらぶな土銀) |
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