A HAPPY NEW YEAR !backnextindex




「…!」
「げ」

何だよ、何だよ、神様よォ。
ちょっと、コレはないんじゃないの?
今年ももう後数分、締めに選んだこの神社で除夜の鐘の音でも聞きながら風情ある終わり方を 望んでたのに、何なんですかコノヤロー、この理想と現実のギャップは。

「テメー、何でここに」
「そりゃあ俺のセリフだっつーの。あーあ、折角今年が清々しく終わると思ったのになあ。 多串君のせいで、だいなしだあー!!」
「テメっ、もう一回言ってみろ!次はブッたぎってやらァ!!」
「あーヤダヤダ、そう言う所が全然清々しくないのよォ」

待ち合わせでもしたんじゃないの?ってくらい、まるで計画されてたみたいに境内で あの多串君にバッタリ出会っちゃいましたよ、銀サン。
服装から見るに、多分コイツは見回りしてる訳じゃねえ。
大晦日で賑わうこの神社の中に他の真選組の奴らも見当たらないし、完全に一人で来たね、こりゃ。
所で多串君は、と言うと、凄い形相で今にも抜刀しちゃいそうです。
さっきの一言が効いたか?
アレ、ちょっとからかうつもりで言ったんだけどねえ。
ま、いっか。

「チッ、…今日の所はこれで勘弁しといてやらァ。俺はココにテメーと喧嘩しに来たんじゃ ねーからな」
「そ?」
「毎年ココには来てンだよ、大晦日に。…て、何テメーに話してんだ、俺ァ」

そう告げると、コイツは胸元から煙草を取り出し、口に咥えて静かに火を点けた。
途端鼻を突く煙草の匂い。
俺は煙草自体は嫌いだ、でも昔から誰かの吸ってる姿は好きだった。


「…オイ、テメーは一人か」
「へ?」
「一人か、って聞いてンだよ」
「あ…ああ」

あら嫌だ、俺ってばこんなヤローに見惚れちまってたよ、オイ。
気付けば多串君は俺から少し離れた場所で、こっちを向いて煙草を吹かしていた。
視線だけは夜空を仰いでいたけど。

「別に…一人だけど」

それが何?
何で急にそんな事問われなきゃいけねーのか解んなくて咄嗟に首を傾げてたら………アララ?
何だか誰かに引っ張られてるようなー……て、どうしてコイツに手首掴まれて連行されてんの、俺!?
ねえ!?
だっ、誰か助けて、お巡りさーん!!
…うげ!そう言えばコイツが警察だったよォ!

「ちょ……待て!何処連れてく気だよ、テメー!!」
「一人なんだろ?」
「は?」
「奇遇だな、俺も一人なんだよ」

はあ、そうなんですかー……、って、違う!
流されんな、俺!!

「だ、だからどうして俺がテメーに引っ張られねえといけな
「丁度いいじゃねェか」
「あ?」
「テメーは一人、俺も一人。手ェ繋いで仲良くなんて柄じゃねーが、共に新年迎えるには丁度いいだろ。付き合え」

あらら?自己満足ですか?
…て、ちょっと待てって。
コイツから微かに酒の匂いが……。
げ、ぜってェコイツ酔ってるだろ?
つか、酔ってるな!?
あー、何でこんなのに捕まっちまったのかねェー。
……でも、たまにはこんな年の瀬も悪くねーかもな。
仕方ねェ、付き合ってやっか。

「…オイ、顔が赤ェぞ。…何だ?俺に惚れたか?」
「はっ…!勝手に言ってろ!オメーこそ顔が赤いんじゃないのォ?銀サンに惚れちゃった?」
「ほざいてろ、天パ。これは酒の所為に決まってんだろーが」

ホント、たまにはこんな年の迎え方も、悪かねえな。 一緒に年越す相手がコイツってのも、むしろ去年までの年越しより全然良いんじゃねーかって 思う俺は……。 とっくの昔にコイツに惚れちまったのかもしんねェよ。



(結局は両思い)
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