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「銀時さん!屈んで右へ飛んで下せェ!」」
刹那、銀時の体はその指示通りに右方向へと移動していた。 屈んだ姿勢を保つ事で定春の体重に左右される事なく瞬間に飛び出せたのは、言うまでもない。 勢い余り地面と触れ合ってしまったが、感じる痛みは殆どなく、掠り傷を負った程度なのだと 銀時は理解した。 脱出した空間からは、土方の刀と定春の犬歯が交わる低い音が発生していた。 「あいたたた………でも助かったァ…」 武器の擦り合う独特のリズムを聞きながら銀時は立ち上がると、着物に付着した砂を 丁寧に払っていく。 そして、 「ありがと、沖田君」 くるしと踵を返し、先刻助けの手を差し伸べてくれた沖田の元へと、歩き出した。 「礼を言われる事は何もしてませんぜ。無事で何よりでさァ」 「ううん、沖田君があの時叫んでくれなかったら俺、今頃鬼に食われてたカモ…」 「ハハっ、そんな事は俺が絶対させませんから、ご安心を」 ―――いざとなったら、俺があの鬼の首を捕ってあげますぜ。 目の前で繰り広げられる鬼と犬の死闘とは打って変わって、朗らかな空気が二人を包み込む。 かつて白夜叉と恐れ崇められた銀時だが、今回の土方のあまりの気迫に押されてしまったのが 正直な話だ。 あの時の沖田の叫び声がなかったら今頃本当に鬼の餌食になってしまっていたのではないか… そう考えるだけで恐ろしくなり、銀時は背筋をぶるりと振るわせた。 一方沖田は、銀時を鬼の手から守る事が出来、ご機嫌の様子。 …『鬼に食われていた』その一言を別の意味に取り、内心異常に反応を示したのは内緒であるが。 「それにしても多串君と定春、何をあんなにムキになってんのかね?やっぱり酒でも 飲みたいのかなァ」 銀時は、というと、街のど真ん中で未だ死闘を続けている一人と一匹を、現在に至っても尚 不思議そうな目で眺めていた。 彼らの喧嘩の理由をまるっきり分かっていない銀時に、沖田は彼らに同情さえ感じてしまう。 まあだがこれで晴れて銀時と二人っきりになれたのだ。 邪魔者は勝手に戦っているのだから、これ程待ち望んだチャンスは滅多にない。 「銀時さん。あの二人なんか放っておいて、お茶でも一緒に、どうですかィ?」 こちらはちゃっかりと、意中の君を御茶に誘っていた。 銀時は思わぬ誘いに、首を傾げる。 「お茶?」 「そうです。あいつらは適当に切り上げるから大丈夫でさァ。それより、パフェでも ご馳走しますぜ、どうです?」 「マジ!?行く!行く行く!!今すぐ行こうか沖田君っ!」 流石沖田、銀時を釣る方法を既に会得していたようだ。 銀時にとって糖分は生きがいなのだ。 パフェという単語を聞くや否や普段の冷めた瞳をこれでもかと輝かせ、嬉しそうに 沖田に微笑みかける。 その様子に、沖田はくすりと笑みを溢した。 「じゃ、早速行きやしょうか」 「おう!やったー!」 「フフ、可愛らしいお人だ。(土方さん、あんたより先にキスを頂ける時はどうやら近そうですぜ)」 こうして、銀時・沖田組は甘味処へ、土方・定春は二人が既に去った事など露知らず、 公衆の目の前で堂々と銀時獲得合戦を延々と繰り広げていた。 土方・定春組が気付くまで、数時間掛かったとか掛からなかったとか。 これが彼らの日常―――Routine! 今回は沖田の一人勝ち*** >(土方vs沖田)×銀時でした。 世にも珍しい定銀要素も有りですが^^; 擬人化定春×銀時も好きなので、こそりと書いて行きたいです。 このお話は数年前に書いた同タイトル本のお話なのですが、もうお持ちの方が いらっしゃらないと思うので、 加筆修正して再アップしてみました。 少しでもお楽しみ頂けましたのなら幸いです。 |