あなたのひとみにうつるもの




たとえそれが認めたくない事柄であっても、常にその人を見ている自分にとって、その人の想いは簡単に分かってしまうものだ。

前々から彼の想いは薄々気付いていたけれど、いざはっきりとそれを見せ付けられると『サディスティック星から来た王子』なんて呼ばれる自分も流石に傷付く。
なんて自分は運がないんだろうと、沖田は舌打ちする。
なぜその男の想いの矛先が自分ではないのか、そればかり悔まれて仕方なかった。


「旦那、」

屯所、縁側にて立ち話をしている銀時にそっと背後から声を掛ければ、彼はくるりと振り返り沖田に笑顔を見せた。
すると、それまで銀時の話相手だった土方はあからさまに迷惑そうな顔をして、『今コイツは俺と話してるんだ、お前は邪魔すんな』と視線で合図を出す。
しかしそうなる事は沖田にとっては計算済みで、土方の機嫌に関係なく沖田も銀時に向け笑顔を振りまいた。

「旦那は今日は何の用でここに?あ、暇だったら俺と遊んで下せえ。俺、今日非番なんでさァ」

答えが判りきってしまっている問い掛けほど空しい事はない、沖田はそれを理解している。
銀時がなぜわざわざ真選組の屯所を訪れているのか、またなぜ土方と会話をしていたのか。
その二つの証拠があれば、どんなに鈍い人間でも、この二人の関係は感覚的に分かってしまうものだ。

それでも沖田が満面の笑みで問いかけるのは、銀時に自分の子供っぽさを見せるためだった。
まだ未成年かつ童顔な沖田は、実年齢よりも幼く見られる事がある。
大人からすれば子供と言うものは無邪気にしていれば中々可愛いもので、きっと銀時もそう思うに違いないと沖田は感じていた。
子供らしくしていれば銀時は、もしかしたら、一瞬でも、土方より自分を選んでくれるかもしれない。
大人になりきれていない少年の、淡い希望ゆえの行動だった。

しかし現実は、沖田に対し冷淡で残酷だった。


「すまねえな、俺ァ今日はコイツに呼び出されてよ。なんだか給料の良い仕事があるとかで。なあ、多串くん」
「…おお。っつーか多串じゃねェって何回言ったら気が済むんだよ」


困ったようににへらと笑い、土方に視線を移す銀時。
そして銀時の言葉に反応し文句を並べるも、どこか優しい雰囲気を醸し出す土方。

沖田は己がただの第三者の傍観者的な立場にいる事を知り、始めからこの二人の間に割って入る事は出来なかったのだと嘲った。

「…そう、ですかい。じゃあ今日は無理なんですね」
「また今度な。俺は基本的にいつでも空いてるからよ、お前が非番の時に万事屋に来いよ。神楽も喜ぶぜ」
「……。ええ、是非遊びに行かせて貰いやすぜ」


この先この人が自分に想いを向けてくれる確率はゼロに等しいのだろう。
そう悟った途端、沖田の中で心が少し、砕けた気がした。
それでも、自身の銀時に対する想いはそう簡単には拭い切れない。
それならせめていっその事銀時に嫌われたいと強く願うのは、沖田の未熟な少年心からだった。



(俺をみてくれないのなら、優しくしないで。)
(土銀←沖)
 
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